遠い山に雪

生活における瑣末なことあれこれを書きます

これは夢の世界だよと伝えてみた

「え!私も今、夢みてるよ!」

 

夢の中で出会った女の子に言われたセリフだ。

私は夢を毎日みるタイプで、私の夢はカラーで五感もあり、感覚としてはリアルとほぼ変わらない。みた夢もだいたい覚えている。さらに、毎日夢をみるもんだから、夢の中で「これが夢だ」と気付くことも多い。先日もどこかの教室で、知らないはずの見知った同級生たち(夢の中でだけ知り合いの本当は知らない人たち)と過ごしていた。そこで私はこれは夢だと気付いたので、横にいた知らないはずの友人に「ねえ、これ、夢だよ。これ、私が今みてる夢だよ」と言ってみた。今まで夢の中の登場人物にこれが夢だと伝えたことは何度かあったが、「その話はやめて」と嫌そうな顔をされたりすることがほとんどだった。だが、私が話しかけた友人は驚いた顔でこちらを見て、「え!私も今、夢みてるよ!」と言ったのだ。私は初めての返答に驚きつつ、初めて夢の中で誰かと繋がれた!と非常に嬉しく思い、感動した。CLAMP作品で育った私としては「夢を通して他人と意識が繋がる」という事象に憧れがあった。「え!私も今、夢みてるよ!」と言った、リアルでは他人のはずの夢の中だけの友人も結局は私の脳が作り出した人物であり、きっと本当に誰かと夢が繋がったわけではないのだろうけれど、自分の内なる欲望が夢に実現したことがとても嬉しかった。もしかしたら、本当にもしかしたら、夢の中の作り上げられたドラマではなく本当に誰かと繋がっていたのかもしれない、と微かな希望を持てる余白があるのも面白い。夢の中の友人はとても可愛く、目がぱっちりとしていて印象的な女の子だった。

 

今までに夢の中でこれは私のみている夢だと伝えた相手は何人かいるが、「監視されているからこれが夢だと気付いていることを口に出すな」というようなことを言われたことがある。私の夢には管理者のようなものがいるようで、苦い顔をした友人の目線の先を見ると、真っ黒な服に身を包んだ謎の生物たちが影からこちらを見ていたりなどしていた。このときの夢は結構ゾワッと怖いストーリーで、この真っ黒な奴らに自分が夢を見ていると気付いていることを知られたらなんらかの処置がされるらしい。声をひそめて「その話はしないで」と言いながら奴らの様子を伺う友人の迫真さに押されて私も口をつぐんだ。ほかにも、タバコを吸っていたおじさんに伝えた時には「これが夢だと気付ける人なんてここにはほとんどいないもんだよ」と言われたりもした。結局すべてはファンタジーが好きな私の脳みそが作り出した世界なのだけれど、こうしてワクワクする物語を寝ながらリアルに体験できるのは楽しい。その代償に眠りが浅く長時間眠らないといけない体なのは多少困っているが、夢の楽しさを知ってしまっているのでこのままでもいいかな、と思う。

夢の世界がやけにリアルだと、起きてからもしばらく夢の世界から抜けられないこともあったりして、今もまだ夢をみているのか、どちらが夢なのかわからないという胡蝶の夢的な状態になることもあるのだが、タダで面白いストーリーを体験できることが楽しくて、私は今日もワクワクしながら眠りにつくのだ。