遠い山に雪

生活における瑣末なことあれこれを書きます

【眠りエッセイ】眠るのが嫌いだった

f:id:dstn18c:20220730161253j:image

保育園児だった頃の思い出に、こんなものがある。

ぼんやりと白く光を通したタオルケットを、私は両手と両足を上げてテントのように支えている。もぞもぞと動いてみたり、タオルケットの糸を指で引っ張ったりしながら、はやくお昼寝の時間が終わらないかな、と退屈な時間を過ごす。

幼い頃の私は寝るのが嫌いだった。赤ちゃんの時から眠り嫌いの素質は持っていて、毎晩決まった時間からきっかり一時間泣き通す私に母親はノイローゼになりかけたという。その眠り嫌いは保育園児になっても続き、私は毎日のお昼寝の時間を退屈に過ごしていた。

先生は私を寝かせようとする。薄暗くされた電気、空調が効いてて涼しい屋内、さらさらのお布団にタオルケットと良い睡眠をとる環境はばっちりなのに、どうも私は毎日寝るのを嫌がった。先生が添い寝をしてくれても、他の子に聞こえないよう小さい声でお話ししてくれても、私はほとんどお昼寝の時間を起きて過ごした。なので私のお昼寝タオルケットはいつも頭のあたりの糸がたくさん飛び出ていたらしい。腕と足でタオルケットのテントを作って、薄明るい世界で空想したり糸を引っ張ったりするのが好きだった。

小さい頃の私には、睡眠というものは退屈で仕方がないものだった。遊べないし、寝てる間にいろんなことが変わっているし。お昼寝するくらいなら、その時間に静かに絵本を読みたかった。夜もできるだけ起きていたかった。「寝る時間だよ、」と寝たくないのに寝るのを強制されるのが嫌だった。

今の私は寝るのが大好きだ。夜は相変わらず特に理由もなく寝たくない日も多いが、基本的には寝るのが大好きになった。夢をみるのが楽しい。今日はどんな夢がみれるかなと思うと、寝るのが少し楽しみになる。ロングスリーパーなので、予定がなければ12時間とか14時間とか寝る日もある。幼い頃はお昼寝しなくても一日中走り回っていられたのに、今はしっかり8時間以上は寝ないといけないし、なんならお昼寝もする。幼い頃の眠り嫌いが嘘のように今は眠りまくっている。

あの頃は睡眠が退屈で仕方なかったけど、今は睡眠時間が幸せでたまらない。でも、あの頃のお昼寝時間を退屈に過ごしていた白くて淡い景色は、それはそれでよかったなと思う。